「うたかた」 田辺聖子 (2008 単行本は1975) 講談社文庫

うたかた (講談社文庫)
虹である人生の真実の生命は一瞬のものだとは、いったい、誰が知り得よう? 人間が真実を抱いていても、それがあい手に伝わり、はッしとひびくのは、ほんの一瞬間で、しかも汐のみち干のようにそれはきまりのある時ではなく、いつ光りだすか、わからないのだ。(虹 p-152)
まだ純文学を志向していた頃の作品、とあとがきにあり、たしかに回りくどいところはあるけれど、それなりに面白い。小説では「実存とは何か」みたいなものばかり読んでいたように思うけれど、こうしたジャンルの中にも人間の真実が切実に現れることに、いまさらながら気がつく。(2011年9月26日読了)