「日本はなぜ敗れるのか ― 敗因21ヵ条」 山本七平 (2004) 角川oneテーマ21

日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)
しかし、各人は、自らの主張に基づく行動を自らは取らなかった。そして自らの行動の基準は小松氏の記す「人間の本性」そのままであった。そのくせ、それを認めて、自省しようとせず、指摘されれば、うつろなプライドをきずつけられて、ただ怒る。そして、そういう混乱は、兵士の嘲笑と相互の軽蔑と反撥だけを招来し、結局、暴力と暴力への恐怖でしか秩序づけられない状態を招来したわけである。(第四章 暴力と秩序 p-122)
「空気の研究」よりもこちらの方がずっと具体的で、説得力がある。旧日本軍の目を覆う実態を引きながら、「日本人がその根っこに抱える問題は、いまだに何も解決していない」ことを指摘していく。問題は、恐ろしいことに(初出以来40年近くが経った今も)確かにその通りであるように思えることと、しかしそれに対して何ら処方箋が示されておらず、どうしたらいいのかやっぱり分からないことである。いまもプチ日本軍の例に事欠かないのは、最後に述べられているように、ここには「自由な」言論がなく、同調圧力も極めて強いからだろう。最終的にその足枷を打ち破るには、社会のdiversityを高め、移民と混血が進むのを待つしかないのかもしれない。(2010年5月30日読了)