「仕事漂流 就職氷河期世代の働き方」稲泉 連 (2010) プレジデント社

仕事漂流 ― 就職氷河期世代の「働き方」
出向先でも一人前、戻って来ても一人前として見られるけれど、自分の中ではまだ何も積み上がっていないという思いが強かったんです。そのなかで、自分しか頼れないんだな、って考えるようになりました。会社は簡単に出向を決めたり、出向先から戻したりするけれど、別に私を育ててくれるわけではない、というか。だから、考え方が個人主義的になりました。仕事は教わるものではなく、自分のやり方を見つけるものなんだ、って(その仕事が自分に合っているかなんてどうでもいい p-214)
よくもこれだけ鋭い考察を集めたものだと感心する。「仕事とは何か?」「私はなぜ働くのか?」という問いについての、それぞれの人生を賭けた模索ぶりを目の当たりにすることが出来る。それぞれの人の気持ちが、ひょっとしたら本人以上に的確に言葉にされているかもしれない。しかし一方で、彼らに対する(批判ではなく)批評的な視点もしっかりと担保されるところが面白い。なんせ、答えはないのだから。社会のルールが変わってしまった中で、その第一世代として前例のないあり方を必死になって探るさまには共感するし、その中で自分の納得のいくように行動するということが、具体的にどういうことなのかを教えられる。でも、どうしたとしても、結局はこれで良かったのだと誰もが思うのではないか。人の一生とはそういうものではないだろうか。(2010年6月26日読了)